HOW TO

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス
19

スーツはスポーツウェアなどカジュアル服に比べ、洗濯したくなるほどひどく汚れるということはないはずだ。とはいえ着ているうちに汗や埃にまみれ、焼き肉、焼き鳥、うなぎなど飲食店の煙に燻されたり、思わぬ食べこぼしや泥ハネのシミがつき、タバコの煙に燻されたりもしている。

これは日頃のメンテナンスで回復させるべきものだ。しかし長く着ている間にいつのまにか薄汚れてイヤな臭いがするようになったら、専門店のクリーニングにだしてきれいな状態に戻してやろう。

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

クリーニングの正しい頻度

一般的なウールのスーツはクリーニング店に依頼することとなる。その際、ドライクリーニングではなく、ウォータークリーニング(水洗い)をおすすめする。石油系の有機溶剤で洗うドライクリーニングは、油汚れや皮脂、埃などの汚れには適しているが、そのぶんウールの質感を損ねるうえ、汗ジミやニオイといったスーツの主たる汚れは落ちにくい。その点、ウォータークリーニングなら汗の塩分、加齢臭などのイヤなニオイも落としてくれる。
汗をかきやすい夏場は、頻繁にクリーニングに出したい気持ちもわかるが、素材の質感を大切にするなら季節の変わり目に、年に1〜2度出す程度でいい。その代わり数着を用意して、1日着たら陰干しして日頃からきちんとメンテナンスをして着回したい。水分とニオイを飛ばしてローテーションしながら着れば、1シーズンでスーツが劣化することはない。

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

メンテナンスの基本はブラッシング

スーツは1日着たら、最低1日休ませる。靴も1日履いたら、最低1日休ませる。これはドレスウェアの基本事項だ。ウールのスーツは1日着用すると、繊維が撚れ,織り目が歪むうえ、均一に力が掛かっている縫製部が捻じれて型くずれを起こしがち。これを回復するために、ブラッシングが必要だ。一日着用したスーツにブラシを掛けることを日課にすればスーツの寿命は格段に上がる。

(a) ブラシは天然獣毛を選ぶ

洋服用のブラシと聞くと、一方向に掛けることで埃や糸くずが取れるエチケットブラシが思いつく。しかしエチケットブラシは、あくまで簡易のブラシであって、メンテナンスには向かない。正しいメンテナンス用ブラシは、スーツの羊毛と同じ、豚や馬などの天然獣毛ブラシがいい。

(b) ブラシは埃を弾くように掛ける

ブラッシングは上から下へ行うのが鉄則。必ずハンガーに掛け、ジャケットは上衿→肩→両袖→背中→前身へ、パンツはウエスト→腰まわり→太腿→膝→裾の順だ。ブラシを手にしたら、はじめは各パーツ面を生地目に沿って、埃を弾くように細かく払う。

こうすることで繊維の撚れと織りの歪みを均していくのだ。 決してブラシを撫でるように長く引いてはいけない。繊維が引き攣れてしまう。 次に縫製部の奥に入り込んだ埃を払う。ステッチに沿って、埃を掻き出すようにブラッシング。最後にボタンの周りや、内側も軽く払っておく。

毎日のメンテナンスには時間をかけてブラッシングする必要はなく、2〜3分程度だ。入念にブラシを掛けるのは月に1度、ワンシーズンに2〜3度程度でいいだろう。

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

きついシワにはスチーマーを使う

ジャケットの場合、背当てのついた椅子に長時間着たまま座っていると背中に大きなシワが入ってしまう事がある。デスクでPCに向かっていると、肘の内側にシワが入ることもあるだろう。パンツの場合は、足の付け根部分にヒゲ状のシワ、膝裏にもきつい座りジワが入ってしまう。

このようなシワは、スチームで伸ばすのが基本だ。アイロンなどを持ち出すと、生地を立体的に変形させて仕立てている箇所が無意味になってしまいかねない。スチームは専用スチーマー、もしくはアイロンのスチーム機能を使う。
スチームの当て方は、必ずハンガーに掛けたまま行うことだ。アイロン台など平らな面に置いたまま掛けると蒸気が逃げずに、スーツが湿っぽくなり乾くのに時間がかかるので注意したい。

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

陰干ししてからクロゼットへ

ブラッシングを終えたスーツは、ハンガーに掛けたまま一晩、風通しの良い場所に干しておく。素材が汗などから吸った余分な湿気を飛ばし、織り目を規則正しく整えるためだ。このとき大切なのはスーツを掛けるハンガー選びと、スーツを干す場所選びだ。

(a) ハンガーは木製かつ無塗装のものを

もちろんブラッシングのときから使うのがベストだが、本来ジャケットとパンツとは別々のハンガーに吊るすほうがいい。そのほうが通気性が高く、生地の回復力が高まるからだ。
ジャケットは必ず肩のあるハンガーを選ぶ。木製の塗装されていないものがいい。防臭、防虫効果のあるアメリカンシダー製なら申し分ない。パンツハンガーはクリップ式よりバータイプのものを。クリップのハサミジワなどが入ると面倒だ。

(b) 陰干しは風通しの良い場所で

リビングや寝室の鴨居に、一晩掛けて干しておくのが一般的だと思われるが、その際、室内のニオイに注意したい。寝室には加齢臭や汗のニオイが、リビングにはダイニングから食事のニオイが充満していることがあるからだ。
通気性の高い部屋など都会では望むべくもないのだが、陰干しは廊下や階段など、空気の動く場所がいいとされている。もっとも陰干しに適した場所は雨や夜露の心配のない屋外。朝イチで取り込むことを忘れなければ、上階のベランダに庇やバスタオルなどで陰を作って干しておけば、ニオイも取れて乾燥も早い。
一階の庭先などは、夜露が降りることがあるので注意が必要だ。

スーツの正しいクリーニング&メンテナンス

クロゼットは余裕を持って

しっかり湿気を飛ばし、シワも回復したスーツはクロゼットに収納する。扉を閉めたクロゼット内は、温度や湿度が安定しているので、スーツの保管に適しているからだ。陰干ししたまま、いつまでも室内の壁などに掛けたままだと、いつのまにか埃をかぶってしまう。

クロゼットに中には市販の除湿剤を入れておくこともお忘れなく。市販品でなくとも、重曹や木炭、粉洗剤を100g程度置いておくと、ニオイ取りに役立つとされるが、確かな効果は疑問だ。むしろポプリやハーブを入れた匂い袋「サシェ」を吊るして、ほんのり香りを移すほうが実用的で、欧米でも一般的な収納テクニックだ。

最後にクロゼット内でもっとも大切なことを述べねばならない。
それは室内をぎゅうぎゅう詰めにしないことだ。ふんわりと返るラペルのロールを押しつぶしてしまっては、スーツはすぐにみすぼらしく見える。収納時は、ショップで陳列されている程度の余裕をもって収納したい。しかし、狭小な日本のクロゼットに、どうしても詰め込まざるをえないときは、裏技を一つ。ジャケットのラペルを立てて、着物のように前を合わせて収納する。
ラペルのロールがペタリと折れず、着る時にはふわりと返る。ただしハンガーの形状によっては上衿にシワが入ってしまうため、ハンガー選びを入念に行うことを推奨する。