シーンに合わせたシャツ(ワイシャツ)の衿型(デザイン)と着分け方
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白無地のシャツはビジネスやフォーマル、ストライプの柄は縞が細いほどドレッシーで、強い色柄のシャツはカジュアル向けなど、それぞれに着分けていることだろう。しかしシャツは衿型によって印象が異なる。それぞれどのような印象で、どんなシーンに相応しいのかをきちんと理解しているだろうか。
かつてはビジネスシーンでボタンダウンシャツは避けるべきと言われてきた。それはボタンダウンがスポーツウェアから派生した衿型だからだ。しかし「ハズし」や「着くずし」といった考え方が広まり、さらに近年はビジネスウェアのカジュアル化が進んだため、明確な着分け方は曖昧になっている。それは時代の変化であって否定はしない。
ここではシャツの衿型の印象と、着分けるシーンを今一度おさらいという形で紹介したい。基本を押さえたうえで、あらためて自分なりのルールで、シーンに合わせて着こなしていただきたい。
ビジネスステイタスを感じさせるなら「ワイドカラー」
セミワイドカラーより衿羽根の開き角度が大きいものを「ワイドカラー」といい、クラシックなビジネススタイルではもっとも美しく衿元がキマる衿型だ。ネクタイのノットを大きく結ぶため威厳とステイタス性を感じさせて、会社なら上役、職業なら士業、フォーマルな席にもいいだろう。ちなみにさらに180°以上の鈍角になるものを「カッタウェイ」と呼び、英国フォーマルなどで重用されるが衿羽根の角度が大きいため、ネクタイも太幅のものでないとノットのバランスが立ちにくい。その代わりノータイでボタンを開けても衿羽根が横にだらしなく広がることがないため、クールビズに多用される。
オールマイティな「セミワイドカラー」
衿羽根の開き角度が、100°前後のものを「セミワイドカラー」と呼ぶ。角度に明確な規定があるわけではなく、ブランドによって少しずつ異なるものだ。セミワイドカラーはビジネス用ワイシャツの定番型で、日本では80〜90年代にそれまでのレギュラーカラーに代わって定着している。ビジネスからフォーマル、カジュアルにもあらゆるシーンで着られるスタンダードな衿型とされている。
見る人によって印象が変わる「レギュラーカラー」
セミワイドカラーより衿羽根の開き角度が小さいものを「レギュラーカラー」と呼ぶ。日本では80年代までシャツの衿型はレギュラーカラーが優勢だったが、近年はワイドカラーやセミワイドカラーに取って代わっている。専門店などでは取り扱いがあり、「ビジネス用品」のカテゴリーであることも多い。ファッションに通じていない人たちの間では、特に注目されることはないが、その代わりセンスある人たちの間では、新鮮味ある衿型だけに最先端と認識されることもある衿型だ。
カジュアルなシーンで着る「ボタンダウンカラー」
ポロ競技の選手がユニフォームの衿羽根をボタンで身頃に留めていたことに着想を得たとされる「ボタンダウンカラー」は、本来カジュアル用の衿型とされ、ビジネスやフォーマルなシーンではNGとされていた。しかし、近年ではその垣根も低くなり「遊び心」や「ハズし」としてボタンダウンを着用することも多い。日本ではクールビズでも多様される。これは衿羽根がボタンで留められているため、ワイドカラーやカッタウェイと同じく、衿元が開かないためである。
フォーマルな席には「タブカラー&ピンホールカラー」
衿にボタンタブがついていたり、衿羽根にカラーピンを通して衿元をタイトに絞る「タブカラー」や「ピンホールカラー」は、ネクタイのノットを小さく結ぶ英国のフォーマルシャツに由来する。つまり盛装として着用することが主だったものだ。近年はその“ドレス感”を着こなしに取り入れるべく日常使いされることもあり、トレンドの衿型として人気となっている。
ファッションユースされる「クレリックカラー」
衿を白無地または身頃と別布で切り替えた「クレリックカラー」。クレリックとは修道士の意味で、法曹の制服として着られていた衿羽根のみ別布で切り替えたシャツが由来とされる。また擦り切れた衿羽根を付け替えられるため労働着由来とする説もある。ともにドレスウェアの出自ではないため、本来クレリックカラーはカジュアル用とされてきた。ノータイで着用したときも、カジュアルなデザインシャツの雰囲気があるからだ。しかしチャールズ英皇太子が結婚式に着用したことから「正式にフォーマルウェアとして着用可」という認識が広まった。英国フォーマルは、全世界的なドレスコードの基準とされているためだ。