略礼服とは?結婚式・葬式での選び方からビジネススーツとの違いまで解説
初めて略礼服を購入する場合、どのようなものを選べば良いのか迷うこともあるでしょう。いくつかの種類があるため、着用するシーンに合わせたものを選ぶことが大切です。
また、略礼服(略礼装)は礼服の一種なのですが、他の礼服(正礼装、準礼装)とどこが違うのかについても、押さえておくと略礼服を購入する際の参考になることでしょう。
加えて、略礼服とビジネススーツでは、同じような色のスーツでありながらも、いくつか異なるポイントがあります。これらを押さえておくことで、略礼服を着用すべきシーンでの失敗を避けることができます。
今回の記事では、男性向けの略礼服について解説していきます。ビジネススーツとの違いや、失敗しない選び方などを紹介します。
INDEX
そもそも略礼服とは?
略礼服には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。ビジネススーツと違う点や着用シーンなど、基本的な知識を押さえておきましょう。
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ポイント1:礼服は冠婚葬祭で着用する服
礼服とは、原則として『結婚式や葬式など冠婚葬祭の場で着用する服』です。スーツの一種ではあるものの、通常のスーツとは明確に区別する必要があります。
本来『冠婚葬祭』とは、人の生涯で最も重要な四つの儀式を総称した言葉です。日本では、古くから『慶弔の儀式』として、冠婚葬祭の催しや行事を大事にしてきました。
『冠』は、お宮参り・七五三・入学・成人式など、節目のお祝い事を指します。結婚式・披露宴・結納など、婚礼に関する催し全般が『婚』です。
『葬』は葬儀にまつわる全般を指し、通夜・告別式・葬儀などがあります。『祭』は、かつては正月や盆など節目の行事を指していましたが、現在は式典や祭典などを意味します。
ポイント2:もっとも格式の低い礼服が略礼服
略礼服とは、冠婚葬祭で着用される礼服の中でもっとも格式の低いタイプのものを指します。
「格式が低い」というのは、決してカジュアルすぎるという意味ではなく、正式な場ではなくても着用できる、ということを意味します。
略礼服は、そこまで形式ばらないシーンでも活躍するので、一着持っているとなにかと便利でしょう。
ポイント3:ビジネススーツとの兼用は原則NG
礼服の一種である略礼服とビジネススーツは、使用する目的や場面が異なるため、兼用すべきではありません。使われている生地や服の構造も、両者には差があります。
礼服は、重要なシーンで着用するものであり、傷みや汚れを発生させないケアが重要です。着用しないときには、きちんと収納しておきましょう。
また、全ての冠婚葬祭の場面で、一つのスーツを着まわすのは良くありません。葬式で着用したスーツを、そのまま結婚式で着ないようにしましょう。
礼服は年間で使用する回数が少ないため、1着のみで着まわしがちですが、それぞれのシーンに合わせた服を使い分けるのが最低限のマナーです。
ただし、略礼服として着用できるダークスーツはビジネスシーンでも着用できます。
【知っておきたい】礼服の種類は3種類
「格式が最も低い礼服が略礼服である」ということは、先ほどご紹介しました。では、略礼服以外にはどのような礼服があるのでしょうか。
礼服の種類は大きく以下の3つに分けられます。
・正礼装
・準礼装
・略礼装
礼服の種類を知っておくことで、うっかり別の礼服を着てしまうというトラブルを防ぐことも可能です。
ここでは、略礼服を含む、礼服の種類について分かりやすくご紹介します。すでにご存じの方も多くいらっしゃるかと思われますが、あらためてチェックしていきましょう。
最も格式の高い『正礼装』
着用するシーンの格式によって3種類に分けられる礼服の中でも、最も格式が高いものが『正礼装』です。
代表的な正礼装は二つあり、昼間に着用するのが『モーニングコート』で、夕方から夜にかけて着用するのが『燕尾服』です。
『モーニングコート』は、結婚式で新郎や新婦の父親が着用する定番衣装として知られています。上着の裾が前から後ろに向かって大きく斜めにカットされているのが特徴です。
『燕尾服』は『テールコート』とも呼ばれ、着用する人の立場はモーニングコートの場合と変わりません。上着の裾がツバメの尾のような形をしていることから、この名称が付けられています。
主賓クラスが着る『準礼装』
正礼装に次いで格式の高い礼服が『準礼装』です。結婚式などに主賓として招待されたようなケースで着用します。
準礼装は2種に分かれ、昼間に着用するのが『ディレクターズスーツ』です。基本的には、黒無地のジャケットにグレーのベスト、ストライプ柄のパンツを組み合わせて着用します。
夕方以降のパーティーなどで着用される準礼装が『タキシード』です。ドレスコードでブラックタイが指定されている場合は、黒のタキシードに黒の蝶ネクタイを合わせます。
近年では、燕尾服と同様に、タキシードは夜の正礼装としても選ばれるようになっています。
使う頻度の多い『略礼装』
礼服で最もポピュラーなスタイルが『略礼装』です。上記で紹介したような立場ではなく、ドレスコードに平服の指定があれば、略礼装を着用します。
略礼装の種類として挙げられるのは、『ブラックスーツ』や『ダークスーツ』です。どちらも昼夜を問わず着用できます。
ブラックスーツは黒、ダークスーツは濃いネイビーやグレーです。どちらも柄物ではなく、無地を選びましょう。
TPOに合わせて、着用するスーツの色を選び、同時にネクタイや靴なども、シーン別に適したものを選ぶことが重要です。
略礼服として着用できるスーツ例
スーツを略礼服として着用する場合、ブラックスーツまたはダークスーツを選ぶことが一般的です。
続いては、略礼服として着用できるスーツについて具体的に解説していきます。
ブラックスーツ
ここで『ブラックスーツ』は、一般的なビジネススーツの”黒い”スーツとは異なることに注意が必要です。
ブラックスーツは、その名の通り全体が黒色で統一されたスーツのことですが、礼服としてのブラックスーツという意味が一般的です。
略礼服としてブラックスーツを着用する場合は、礼服としてのブラックスーツを指します。一般的な”黒い”スーツとは異なり、冠婚葬祭で使用されます。
ダークスーツ
次に挙げられるのが『ダークスーツ』です。
ダークネイビーやブラック、チャコールグレーなど、濃い色合いのスーツを指します。これらの色はビジネスシーンでもよく見られる万能色と言えるでしょう。
ダークスーツは、ビジネスから冠婚葬祭まで多くのシーンで着用できるのが特徴です。
略礼服の具体的な着用シーン
それでは、略礼服がどのようなシーンで着用されるのかを詳しく見ていきましょう。
略礼服は形式が厳格でないため、多くのシーンで着用できます。
着用シーン | 詳細 |
---|---|
結婚式・披露宴 | ゲストとして出席する際は略礼服であるブラックスーツやダークスーツが適している。 主役としての出席の際はよりフォーマルなスーツを選択することが望ましい。 |
葬儀・葬式(弔事) | ブラックスーツは喪服としても着用可能。 ブラックフォーマルスーツは”準喪服”に、ダークスーツや黒いスーツは”略喪服”に該当するため、着用シーンに注意が必要。 |
フォーマルなシーン全般 | 授賞式やビジネスパーティーでの着用が考えられる。 特定のドレスコードやより厳格なシーンでは正礼装や準礼装の着用が必要。 参加するシーンのフォーマルさを事前に確認することが大切。 |
結婚式
略礼服は、結婚式や披露宴などの「慶事」で着用できます。特に、ブラックスーツやダークスーツは、ゲストとして出席する場合に適しています。
ただし、自身が主役となる場合は、よりフォーマルなスーツを選ぶとよいでしょう。
葬儀・葬式
また、略礼服は「弔事」である葬儀や法事でも着用されます。
ただし、喪服としてブラックスーツを着用する際は格式に注意が必要です。
ブラックフォーマルスーツとしてのブラックスーツは”準喪服”に該当します。一方、ダークスーツとしての”黒いスーツ・ブラックスーツ”は”略喪服”に該当しますので、ご注意ください。
フォーマルなシーン
略礼服は、授賞式やビジネスパーティーなどのフォーマルなシーンでも活躍します。
しかし、特定のドレスコードが指定されている場合やより厳格で重要なシーンにおいては、正礼装や準礼装を着用すべきです。
そのため、自分が参加するシーンがどの程度のフォーマルさを求めているのか、事前に確認しておくことが大切と言えます。
ビジネススーツと礼服の違い
一般的なビジネススーツと礼服を比較すると、両者の間には色・生地・デザインなどいくつかの相違点があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
黒の濃淡に違いがある
礼服の色は黒ですが、ビジネススーツの黒に比べ、より濃い『漆黒』であることが特徴です。特に、屋外で比べると両者の濃淡差は明白です。
「冠婚葬祭は黒のスーツであれば良い」と、黒のビジネススーツを着用しないようにしましょう。
礼服の生地には、黒色が染み込みやすい素材や、漆黒に見えやすい織り方の素材が使われています。
深みのある黒ほど、上質なものとされているため、フォーマルな度合いが高い場合は、黒の濃さが強いものを選ぶのがおすすめです。
光沢や生地の質が別物
両者の間には、生地の質感にも違いがあります。光を反射する生地を用いた一般的なスーツは、本来の黒より明るめの色に見えるのが特徴です。
一方、礼服に使われる素材は、光を吸収しやすいように工夫されています。明るさや白っぽさが生まれないマット素材は、光に当たっても漆黒の度合いを失いません。
風合いや手触りにも、はっきりとした違いが分かるでしょう。多くの礼服には、きちんと織り込まれた良質な生地が採用されているため、通常のスーツに比べて重く、手触りもやわらかめです。
デザインにも違いがある
ジャケットの後ろ身頃の裾部分に入っているスリットを、『ベント』といいますが、ビジネススーツと違い、基本的に礼服にはベントがありません。
また、多くの場合、ビジネススーツには襟の芯地を止めるためのステッチが施されています。一方、略礼服にはステッチが入っておらず、よりスッキリとした印象に見えるのです。
足元の印象も異なります。スーツのパンツの裾には『シングル』、折り返しのある『ダブル』、裾が斜めになっている『モーニング』といった仕上げ方があるのですが、略礼服の場合にはスマートな印象のシングルやモーニングなどが多く用いられています。
シルエットも比べてみましょう。近年のトレンドも影響し、仕事用のスーツはウエストが絞られた細身のシルエットが増えてきています。一方、礼服は余裕のあるシルエットが基本です。
このように、両者にはデザイン面でもいくつかの相違点があることがわかります。
略礼服のおすすめの選び方
一般的なスーツと比べて着用機会の少ない礼服だからこそ、ポイントをしっかりと押さえて 購入する必要があります。失敗しないための参考にしましょう。
5年以上使えるものを選ぶ
礼服は、長く着用できるものを選ぶのが基本です。略礼服についても、長く着用するにはトレンドに左右されないデザインやカラーのものを選ぶと良いでしょう。
また、礼服は年に数回しか着用機会がなく、1度も着ることのない年もあるかもしれません。きちんと保管していれば、生地も傷みにくいため、買い替え頻度を抑えられます。着用頻度やお手入れによっては、5年から10年の着用が可能になるのです。
また、礼服は、一般的なスーツに比べて少々高額です。しかし、長く着用できるものを選べば、十分に元を取れるでしょう。
ただし、冠婚葬祭以外にも着用できるダークスーツは、必ずしも5年以上という期間にこだわる必要はありません。
サイズ調整が可能なものを
日常的に着るものではない礼服は、いざ着用しようとした際、体形に合わずきつく感じる場合があります。どうしても着られない場合には、買い替えを余儀なくされるケースもあるでしょう。
このような状況を想定し、サイズ調整できるものを選ぶのもおすすめです。特に、ウエストサイズは変化しやすいため、ウエスト部分にアジャスターが付いているものであれば安心できます。
シルエットにも注意が必要です。近年のトレンドであるスリムなシルエットの礼服を選んでしまうと、体形の変化により着用できなくなる恐れがあります。
数年後の予期せぬ体形の変化にも対応できるように、サイズにゆとりを持たせましょう。
高すぎないものを選ぶ
略礼服は、正礼装や正喪服と比べると値段がやや安価であるとは言え、高すぎず、安価すぎないものがおすすめです。ご自身の立場に合った金額内で選ぶのがポイントになってくるでしょう。
金額の目安としては、普段着ているスーツと同等か、やや高めの予算で購入するのがおすすめです。
TPOに合わせた礼服の着こなし方とマナー
礼服は『どのようなものを選ぶか』だけでなく『どのように着こなすか』ということも重要です。ルールを守りながら、状況に合わせた着こなし方を押さえておきましょう。
ここでは、略礼服を着用する以下の2つのイベントのマナーについて解説します。
・結婚式
・弔事
結婚式では少し華やかに
結婚式で礼服を着用する場合は、派手になりすぎない程度に、華やかさを添える意識を持ちましょう。
胸ポケットにネクタイと同系色のチーフを挿したり、シャツの色や柄でさり気ないアクセントを加えたりといった形もおすすめです。
タキシードを着用するシーンでは、華やかな装いを演出できるウィングカラーシャツや、黒の蝶ネクタイを合わせましょう。
いずれにしても、礼服の品格を損わない程度に留めておくことが重要です。個性を主張するのではなく、ワンポイントで少し華やかさをプラスすれば、悪目立ちしません。
ご自身が主役というわけではなく、関係のある方の結婚式や披露宴などのお祝いに参加する機会もあるでしょう。その場合には、あくまでも主役を引き立てることを重視してコーディネイトを組むことが求められます。
弔事は黒でまとめよう
葬式などの弔事で着用する礼服は、黒で統一するのが基本です。シャツのみ白の無地を選び、ネクタイや靴下は全て黒でまとめましょう。
腕時計やアクセサリーといった、光る小物の着用もNGです。ネクタイピンやカフスボタンを付ける場合も、黒い石でできたものを選ぶ必要があります。
また、弔事で着る礼服に関しては、地域独自のルールが定められている場合があるため注意しましょう。
略礼服に関するよくある疑問・質問
続いては、略礼服についての知識を深めるために、よくある疑問・質問をピックアップして詳しく解説していきます。
なお、略礼服を選ぶ際には、着用シーンや用途、予算などが明確に決まっていると相談しやすくなるでしょう。購入の際には、ぜひ店員さんに相談してみてください。
また、ネクタイや靴下などの小物も一緒に揃えておくと、後で慌てずに済むためおすすめです。
Q.略礼服は季節や着用シーンに応じて選びますか?
A.季節や着用シーンごとに選ぶとよいでしょう。
略礼服は、基本的には黒や深紺などのダークカラーが主流です。ただ、季節や着用シーンによって微妙に選び方を変える場合があります。
例えば、夏場の結婚式では涼しげな素材のスーツを選ぶのもよいでしょう。
また、ビジネスパーティーや授賞式などのあまり厳格でないシーンでは、シャツやネクタイ、小物などで異素材の組み合わせを試してみるのもおすすめです。
Q.略礼服はシングルとダブルどちらがいいですか?
A.原則として、どちらでも問題はありません。
略礼服としてスーツを着用する場合には、シングルブレストとダブルブレストのどちらでも問題ありません。
ビジネスシーンでも着用したいのであれば、よりシンプルで合わせやすいシングルブレストがおすすめです。
一方、よりフォーマルな雰囲気を出したい場合には、豪華さを感じさせるダブルブレストが適しています。
また、着用する方がお若い場合はシングルの方が好ましいとされるケースもあります。
Q.略礼服はオーダーメイドで用意した方がいいですか?
A.自分だけの一着を求めるなら、オーダーメイドがおすすめです。
オーダーメイドの略礼服には、以下の様なメリットがあります。
・自分の体型にピッタリと合わせて作ることができる
・見た目が美しく着心地も良い
また、デザインや素材、細かな仕様まで自分の好みに合わせられるため、自分好みの一着を手に入れることが可能です。
なお、オーダーメイドというと「料金が高額なのでは?」と思われがちですが、企業努力によってお求めやすい価格のオーダースーツもあります。
大人として恥ずかしくない服装を
礼服とは、冠婚葬祭で着用するスーツのことです。色・生地・デザインにおいて、ビジネススーツとは明確な違いがあります。
礼服の種類は、『正礼装』『準礼装』『略礼装』の3つです。参加する場のドレスコードを事前に確認しておき、状況や立場にあった礼服を選ぶことが重要です。
また、結婚式と弔事ではスーツの着こなし方を変える必要があります。最低限のマナーをきちんと守りつつ、TPOに合わせた着こなしを意識しましょう。
略礼服の扱いは、多くの方が混同しやすい部分です。とは言え、参加者の一員として、一般的なマナーはしっかりと押さえておきたいところ。選び方や着用時の注意点を押さえ、自信を持って略礼服を着用できるようにしましょう。