スーツの生地を選ぶときのポイント。原産地別のおすすめブランド
2021.05.26 WED

スーツの生地を選ぶときのポイント。原産地別のおすすめブランド

スーツを選ぶポイントにはいくつかありますが、『生地』は仕上がりや見た目に大きく影響する大切な要素です。生地の素材や原産地、代表的なブランド等生地選びのポイントを知ることで、ワンランク上のおしゃれに役立てましょう。

スーツ生地の代表的な織り方

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スーツを選ぶ際、シルエットやデザインなど、見た目に直接影響する点を重視する人が多いかもしれません。一方で、生地に目を向けてみることで、よりこだわりのあるスーツ選びを楽しめます。

まずはスーツによく用いられる、代表的な生地の織り方について見てみましょう。

夏用に使われやすい平織

「平織」は、最もシンプルな構成で織られている生地で、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の浮き沈みを交互に1回ずつ繰り返して織ったものです。

糸どうしの間に隙間が生まれることで、通気性にも優れています。そのため、夏もののスーツに適した生地といえます。

単純な織り方ですが、丈夫さのある生地を織ることができる方法です。薄地で通気性がよく、春夏用のスーツでもよく利用されます。

冬用に使われやすい綾織

もう一つの代表的な織り方が「綾織」です。綾織は「斜文織」とも言われ、ラインが斜めに浮き上がってくるように見える点に特徴があります。

密度が高くなるので、保温性があり、冬物のスーツによく採用される生地です。耐久性にも優れていて、使用するにつれ艶が出やすい特性もあります。

生地として完成したときに高い密度が備わっているため、平織と比較すると表面が滑らかな仕上がりになります。肌触りもソフトで、見な目にもしなやかさが感じられる織り方です。

主に使われる素材

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生地に使われる素材にも、多様な種類があります。それぞれに特徴があり異なる効果が見込めるので、スーツ選びの参考にしてみると良いでしょう。

ここでは大きく、天然繊維と化学繊維とに分けて、両者の特徴について掘り下げていきます。

ウールなどの天然繊維

「ウール(羊毛)」は、スーツに採用される天然繊維の中でとてもポピュラーであり、代表的な存在です。弾力性や伸縮性に富み、吸湿性や保湿性、耐久性にも優れています。

ウールは、柔らかな肌触りがあり、シワにもなりにくい特徴があります。そのオールマイティーさは、スーツのみならず衣類全般で活躍する素材といえるでしょう。

高級素材としても知られる「カシミア」も、スーツに適した素材といえます。カシミアとは、中国北西部からイランにかけてのユーラシア大陸東部に生息する「カシミア山羊」から採った毛による繊維です。

きめが細やかで、上質な触感と品のある光沢で人気があるカシミア。気密性の高い生地を製造できるため、薄くても暖かい衣類を仕立てられるのが特徴です。

また、「コットン(綿)」は衣料品全般で最も多く採用されている素材です。耐久性や吸湿性があり、価格も手頃なため、コストパフォーマンスの高い素材といえるでしょう。

ポリエステルなどの化学繊維

「ポリエステル」は、衣料用として使われる化学繊維の代表といえます。石油を原料としており、スーツはもちろん、多様な衣類に用いられています。

ポリエステルは丈夫な素材であるだけではなく、弾力性があります。そのため、衣類に採用したとき、動きやすさが上がる点がメリットです。とても軽く、シワにもなりにくい性質もあります。

「ナイロン」も、衣料用の化学繊維としてオーソドックスな素材です。丈夫さや伸縮性、軽量さなど、衣類に用いたときの利点がそろっています。軽量で速乾性がある点もメリットです。

「レーヨン」は、絹のような滑らかな質感を備えた化学繊維として開発されました。しなやかな光沢があり、肌触りも良く、吸湿性もある素材です。種類の異なる繊維との混紡で、多くのスーツで採用されています。

生地の品質を見極めるポイント

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生地には当然、良し悪しがあります。ぱっと見た印象が気に入ったとしても、スーツ用の生地に選んだときに、着心地や機能が優れているかどうかは別問題です。

そこで、生地の品質を確かめるポイントについて解説します。

手に取って確かめる三つのポイント

生地のクオリティーを見極めるポイントには、主に三つあります。『光沢』『柔らかさ』『シワになりにくさ』の3点を、手に取って確認することです。

光沢の違いを見るには、同系色の生地を光の当たる場所に並べて、違いをチェックしましょう。シルクが織り込まれている生地では、高級感のある光沢が目に映るはずです。光沢感のある素材でスーツとして仕立てると、エレガントさを演出してくれるでしょう。

柔らかさのレベルを知るには、指先で生地を摘んでみることです。硬くゴワゴワしたものよりも、ふんわりとしていることが望ましい感触です。

柔らかさが大切である一方で、シワになりにくい生地かどうか調べることも重要です。摘んだ状態から指を離し、そのままシワが寄ってしまうようでは良い生地とはいえません。

SUPER表示

一口に『ウール素材』といっても、生地によって違いがあります。「SUPER表示」は、原料の繊維の細さをわかりやすく示したもので、ウールにのみ採用されている基準です。

一般的にウールの原毛は、細くて長く、縮れているほど高品質とされています。その条件のうち、SUPER表示が表しているものは原毛の細さです。

「SUPER90’」と表記されていれば19ミクロン、「SUPER100’」であれば18.5ミクロンというように、数値が10上がるにつれ原毛が0.5ミクロン細くなることを示します。

つまり、番号の数値が大きいほど細く繊細な糸であることがわかります。そして、細い糸を使うということは、衣類1着にそれだけ多量の糸が必要になるということです。

その効果として、気密性が高く保温性に優れた生地を織ることができるので、薄くても暖かい衣類が製造できます。

上級者は番手までチェックする

SUPER表示がウールにのみ適用されるのに対して、番手は糸全般に用いるものです。

数字が大きくなると、それだけ糸が細いことを示しています。例えば80番手よりも100番手の方が、細い糸という意味になります。

生地選びの上級者ともなると、番手までしっかりとチェックします。高い番手の生地を使ったスーツは高価な傾向があり、保温性や吸湿性といった機能性や触れたときの感触、見た目の質感に違いが現れるのです。

しかし、番手はタグなどに表記されてはいません。一目で分かる表示がないため、生地を触り比べて違いを判断するか、店頭のスタッフに確認しましょう。

生地の代表的な原産地

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生地は、織り方や使用する素材によって違いが生まれますが、原産地によっても異なる特徴を持っています。

イタリアとイギリス、そして日本産など、原産地による生地の違いを見てみましょう。

柔らかく色柄豊富なイタリア

イタリアの生地は、ファッション愛好家の間でも高い人気を集めています。柔らかな肌触りと、豊富な色柄がそろっており、数々の衣料メーカーがイタリアの生地を採用しています。

イタリアは晴天の日が多く、1年を通して比較的湿度が低い気候です。乾燥気味の大気が生地のへたれを抑えてくれる環境にあることから、薄くて柔らかな生地が好まれ、その文化が発達したといわれています。

イタリアの生地に柔軟性があるのは、単糸による生地であることが理由です。1本の糸で織られた生地が、柔らかさにつながっています。

また、色柄が豊富な生地が多いのは、ファッションデザイナーが、生地の製造に関与していることが多いためともいわれています。生地の製造段階で、既にデザイン性が加味されているのです。

クラシックで厚みのあるイギリス

スーツ発祥の地であるイギリスの生地の特徴は、強いハリとコシが備わっており、頑丈である点です。

イギリスは平均気温が低く、湿度が高い気候です。そのため、厚手でしっかりとした生地でなければすぐにヘタッてしまいます。そのような理由から、肉厚で強固さのある生地が好まれているのです。

デザイン面においても、堅実さを感じさせるオーソドックスな色柄が主流を占めています。イギリス産の生地は、堅くてしっかりしているクラッシックな素材が好きな方におすすめです。

耐久性の高い日本

日本におけるモノ作りのクオリティーは、世界のファッション界や服飾メーカーから高く評価されています。

夏は高温多湿、冬は深い降雪に見舞われる地域もある日本は、四季を通じで気候が大きく変わる特性を持っています。そのため、衣類にはさまざまな環境に対応できなければなりません。そのため、日本産の生地は耐久性に優れていることが特徴です。

その需要に応えようとするモノ作りへの真摯な姿勢が、多様な気候にマッチする機能性や高い耐久性を備えた生地づくりにつながっているのです。

おすすめのイタリア生地ブランド

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イタリアとイギリス、日本の3カ国で生産される生地の特徴を見てきました。

次に、それぞれの国で魅力的な商品を製造する生地ブランドを個別に見ていきましょう。まずは、イタリアの4ブランドから紹介します。

各国リーダーも選ぶ「エルメネジルド ゼニア」

北イタリアで1910年に創業し、各国のリーダーや世界のエグゼクティブからの厚い信頼を集めるブランドです。

「最高の素材は優れたデザインを、最高のデザインは優れた素材を求める」を理念に掲げており、ファッションの基礎は素材であるというポリシーを貫いています。

最高の生地を採用したスーツばかりでなく、ジャケットやカジュアルファッション、スポーツウエアに至るまで、幅広いアイテムを手掛けるブランドです。

また、ブランドネームを服地の耳に織り込む取り組みを、業界で初めて実施したことでも有名です。

柔らかく上品な「ロロ ピアーナ」

最高級のカシミアと最高級のウールを扱う、世界のトップブランドとして知られています。1924年に、創業者であるピエトロ・ロロ・ピアーナがテキスタイル(毛織物)専門の企業を立ち上げたことからスタートしました。

ロロ ピアーナは、生地の製造において、原料となる糸の生産や紡績といった生地作りの初段階から手掛け、最終的な衣類の完成までを1社でまかなうSPAという形態をとっています。

服飾ブランドの多くは、服地の仕入れを行うだけで、自社で生地の製造までを行うケースはそう多くはありません。素材の製造から一貫して行う姿勢からは、テキスタイルへの情熱を感じます。

発色の良い「カノニコ」

広大なオーストラリアで育まれた羊から採った原毛を直輸入し、紡績から生地の生産までを自社のみで展開するブランドです。

最先端の紡績技術と織り作業によって作られる生地は、発色が良く、エレガントな質感があります。加えて、優れた軽量さや柔軟さにも定評があるブランドです。

美しい発色と光沢を生む秘密は、高品質のウールやシルクを適切な割合で混紡されていること。ハイクオリティーでありながら価格帯を抑えた商品もあり、コストパフォーマンスにも優れたブランドといえます。

光沢が魅力的な「チェルッティ」

1881年にイタリアのビエラ地区で誕生した生地ブランドで、魅力的な光沢を放つ生地が人気です。伝統技術と最新鋭のシステムを用いて高品質な生地を世に送り出しています。

チェルッティの生地が生む光沢は、100年を超える老舗企業が培った熟練の技術による賜物です。気品ただよう光沢は、数多くの高級生地メーカーの中でも比類ない美しさを備えています。

おすすめのイギリス生地ブランド

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続いて、イギリスからおすすめの生地ブランドを紹介しましょう。

イギリスとフランスが融合した「ドーメル」

1842年に、フランス人であるジュール・ドーメルが創業したブランドです。イギリスの繊維をフランス国内で販売しだしたことからスタートしており、イギリスの頑丈な生地に、優雅なフランス風のデザインを融合させています。

品質管理を徹底するために、事業規模を広げず、ファミリー企業としての形態を守り抜いている企業です。経営者は代々、一族から輩出しており、現在は5代目のドミニック・ドーメル氏が会長を務めています。

耐久性とデザイン性を兼ね備えた生地は、世界のハイブランドへも供給し、厚い信頼を寄せられているブランドです。

イギリスらしさのある「ジョン フォスター」

1819年、イギリスのウェストヨークシャー州で生まれた老舗生地ブランドです。51年開催のロンドン万国博覧会では、糸で金メダル、モヘア生地で1等に輝いたことで世界にその名を知らしめました。

コシとハリを備えつつも、イギリスの生地としてはしなやかである点が特徴です。長く使用し続けられる耐久性の高さも魅力といえます。

デザインはいかにもイギリスらしいもので、無地やストライプ、チェックといった伝統的でオーソドックスなスタイルを基本としています。

伝統と技術が融和した「サヴィル クリフォード」

イギリスのハダースフィールドで創業したブランドです。同所は、毛織物の産地として古くから知られている地域で、この地で生地づくりの技術を育みました。

生地の艶やしなやかさは抑えられ、厚地で重厚感がある見た目が好きな方におすすめです。肉厚である生地である一方で、軽くてストレッチ感のある着心地を実現しています。

サヴィルクリフォードは、歴史を重んじながら、時代に合わせたデザインにも意を注いでいます。伝統と流行の融和が図られた生地の開発に取り組んでいるブランドです。

耐久性の高い「ハリソンズ オブ エジンバラ」

テキスタイル企業の名門として広く知られており、イギリス最大手のファミリー企業として生地の生産を手掛けているブランドです。

イギリスの生地の特徴を踏襲し、しっかりと打ち込まれた生地は、仕立て映えのする品質を備えています。アイロンでの型付けもしやすいため、多くの衣料メーカーが採用する生地ブランドです。

耐久性があり、同時に復元力にも優れているため、ブランド品でありながら使いやすい、という点も人気の秘密でしょう。

おすすめの日本生地ブランド

商品開発力では世界から高い評価を得る日本の生地ブランドについて、厳選して紹介します。

こだわり抜かれた「御幸毛織」

国内の紳士服業界では最高級ブランドと評されており、高い品質を追求する姿勢と、そこから生産される毛織物のクオリティーには、多方面からの評価が寄せられています。

原料にもこだわる同ブランドは、1980年にはオーストラリアに自社牧場を開設し、自ら育てた羊から原毛を採取する徹底ぶりです。

丁寧に生産された生地は、光沢や触感、ハリ、艶などあらゆる面で最高水準の品質を誇っています。

昔ながらの希少な製法で作られる「葛利毛織」

1912年、日本の毛織物産業を古くから支え続けてきた愛知県一宮市で誕生しました。以来、海外でも賞賛される毛織物を製造し続けています。

その最大の特徴は、低速織機の使用による、独特の風合いです。創業時から守り抜いている希少な製法で織る生地には、現代ではほとんどの生産現場で使用する高速織機では生むことができない美しさがあります。

生産効率が低いため、大量に製造することは難しい方法です。しかし、丁寧に仕上げられた生地の肌触りは滑らかで、高級感があります。日本の技術ならではの質感を楽しむことができるでしょう。

自分に合った生地を選ぼう

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スーツを購入するにあたっては、ついデザインやシルエットにばかり目が行きがちです。生地にまで意識を向けることで、一歩進んだスーツ選びができるでしょう。

生地の種類ごとに、着心地や肌触り、仕立てたときの質感等にそれぞれ特徴があります。自分に合った生地を選んで、ハイセンスなおしゃれを楽しみましょう。

KASHINAVI編集部
KASHINAVI編集部
オーダーメイドブランドのKASHIYAMAによる、知って得するスーツの常識をまとめたコンテンツ「KASHINAVI」を運営。 スーツに関するお悩みに対してナビゲートします。